すべては150年以上続く暖簾を守るため試行錯誤の連続でした。
創業が、今から162年前の安政年間という竹輪や辛子蓮根の製造販売を手掛ける不動ちくわ本舗に勤める山下さん。職場では、主に辛子蓮根の製造を任されています。学生時代のアルバイトで天ぷら作りに従事していた経験から、食品の製造販売には少なからず興味を持っていました。
とは言え、同社は150年以上、暖簾を守り続けてきた老舗。勝手の違いに戸惑うことも多く、失敗を繰り返す日々でした。
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一つ一つ言葉を選びながら話す山下さん。実直な職人気質が感じられる
「受け継いできた伝統の味を守り、毎日同じ味で再現しなければいけない」というプレッシャー。魚のすり身など、扱うものが生ものなので、その日の気温に応じた厳しい温度管理が求められます。
山下さんが担当する辛子蓮根も、衣の厚さとゆるさを一定に保つためには、「細やかな水分調整が必要」と話します。
「毎日、材料の分量を記録し、自分なりのデータ作りから始めました。先輩方の仕事をよく見て、必要ならば質問もしました」。
日々同じ作業の繰り返しのように思えても、その中で「どうすれば上手くできるのか」を考えて作ることが、「”伝統の味”を作り続ける上でもっとも大切」と山下さん。
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形を整え水にさらした蓮根の穴に、機械を使って味噌を注入していく
目指すのは「熊本で一番美味しい辛子蓮根」と言われること
辛子蓮根は他県の人への贈答品としても人気の郷土料理。不動ちくわ本舗では、高速道路のサービスエリアや空港の土産店などにも卸しています。
一方で、伝統の味を守りながらも、時代に合わせた新しい商品開発にも力を注ぐ同社。その一つが、山下さんが試作した一口大にカットした辛子蓮根。取引先のホテルや飲食店での試供では好評を博したとか。
「とにかく『おいしい』と言われることが一番のやりがい。これからも工場と販売所が連携し、お客様の声を取り入れながら、『熊本で一番』と言われる辛子蓮根を作っていきたい」と、抱負を語ってくれました。
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でき上がった商品を配達するのも山下さんの仕事の一つ